昔の花形職人「カシメ衆」と、カシメ衆から広島一のヤクザへと成り上がった「悪魔のキューピー」の話

【顔は可愛らしい顔で、普段は言葉遣いや物腰も柔らかく、華奢で身長も160センチ以下と低く、着流しを着れば女性と見間違える、ボンボンの様なイデタチだった。しかし、実際はカシメ衆の職人上がり、腕っぷしは勿論、度胸も座っており、その暴力性はウワサで広がって行き、当時の広島中のヤクザ達に名を知られる様になる。ついた通り名は『悪魔のキューピー』】

悪魔のキューピーは、仁義なき戦いの一作目で、梅宮辰夫が演じていた役です。(上の写真の右側が実際の悪魔のキューピー。ちなみに、左側が、菅原文太が演じていた美能幸三。仁義なき戦いでは「広能昌三」)

仁義なき戦い好きな人は、是非とも小説の『悪魔のキューピー』を読む事をオススメ。

で、この「悪魔のキューピー」こと大西政寛は、もともとはカシメ衆あがり。

昔の造船所は、飯塚の炭坑夫と同じ感じで、縄張り意識、仲間意識が非常に強く、腕に自信のある若い衆の職業だったそうです。

その中でも、船を造る花形として『カシメ衆』という4人1組の職業がありました。

大きな船を造るには、沢山のカシメ衆が必要で、休憩の水飲み場、定食屋などでの争いは絶えなかったそう。

映画『青春の門筑豊編』でも、ボタ山で日本刀持って決闘とかあってたけど、そんな感じだったんでしょうね。

カシメ衆の4人の序列も、厳格に任侠界と同じ様に決まりがあり、必然的に『4人の一本どっこの組』の様に絆が産まれる。

造船場の花形職業、カシメ衆とは??

昔の鳶や造船場の溶接の花形『カシメ衆』という職業。東京タワー、デカい船、このカシメ衆なくては出来なかった。昔の日本の職人さんは偉大で凄いですね。

仁義なき戦いで、梅宮辰夫演ずる『悪魔のキューピー』こと大西政寛も、元は造船所のカシメ衆の若衆として、現場で様々なカシメ衆たちの争いなどを収めたり喧嘩を繰り返して頭角を現したと言われてます。

カシメ衆は、4人1組でチーム。

カシメ衆の仕事は、船の鉄板をリベットで打ち止める仕事。リベットといっても、船の浸水を防ぐ必要があるので、多分、硬球くらいの大きいヤツだったはず。昔、本で見たんだけど忘れた。

今では溶接機があり、各自が溶接の機械を持ちながら造船所では各部位を止めていくのですが、昔は溶接機がない為、4人1組でリベットと呼ばれるものを打ち付けていました。

リーバイスの501のリベットと同様で、水が浸透しないように重要なところはガッチリと必要になる。

4人は『ホド』『取次』『当て番』『鋲打ち師』とそれぞれ役割があり、貫目は確か『鋲打ち師』が1番上で兄貴分となります。

  • ホド・・800度の熱した鉄を下から投げる
  • 取次・・鉄のグローブで鉄を取り鉄骨に差し込む
  • 鋲打ち師・・機械で鋲を打つ
  • 当て番・・鋲打ちの裏側を押さえる

当時は、この4人1組のグループが造船所や鉄骨現場に沢山いて活動していた。

まず、そのリベットと呼ばれる鉄を、地上でキンキンに真っ赤になるまで熱くする。その役目がホドって人。

で、ホドは、その真っ赤な熱いリベットをトングみたいなものに挟み、上の兄ィに放り投げる。

それを鉄製のキャッチャーミットみたいな特殊な道具で受け取り、熱い状態で穴に差し込む『とりつぎ』という役。

で、とりつぎが打ち込んだ熱いリベットを機械でパンチングする『鉄打ち』そのパンチングの裏でストッパーをする『当て番』。

この4人の息が合ってるのが基本。

当然だけど、リベットは熱く、熱い鉄球をキャッチボールしてる状態で、下のホド、上の当て番、どちらも下手くそだと距離が稼げない。

例えば、『取次』が下手だと『ホド』から投げられてきた鉄の塊を取れない。

船の外側だから、何10メートルの高さがあるので、何段も足場を組んでいるわけだから、上のカシメ衆のヘマは下の作業員の命の危険がある。

熱い何キロのリベットが落ちてくる。

もちろん、下から上に投げる人間がノーコンで肩が弱いと、上で待ってる人間には届かず、意図しない所に行ってしまう。

弱肉強食の職人世界。他のカシメ衆に舐められては良い現場に付けない。

また、職人としての技量が無ければ良いポジションには付けない。

キャッチ出来ないと、下で作業している別のカシメの人達に熱い鉄の塊が落ちるわけなので大事故に繋がり、4人全員が上手く無ければ船などでも上の高い所には行けない。

当然上の方がお金も高くなる。

『取次』に鉄を投げる『ホド』も下手でノーコンだと、高いとこ、距離が離れてるとこには投げれないので、距離が近い所に配置される、ここはお金も安い。

このように、この4人それぞれがその分担された箇所で、サバければサバけるほど4人の給料が高くなる。

1人でも出来ないと溶接までの時間がかかる、他のカシメ衆に迷惑がかかるので稼げない。

だから4人が各自の役割に誇りを持ち、お互いが息を合わせることに集中していく。

仕事の休憩中の水飲み場の順番、夜の街での他の職人たちの羨望のまなざし「あの1番高所のカシメ衆だ」という風になり、全てにおいてイニシアチブが取れる。

高給取りで、なおかつ職場の花形、4人1組で夜の街を肩で風を切って歩いていく。

命懸けの仕事の為、この4人には絆ができる。

『鋲打ち師』の兄貴分から、礼儀作法や所作、他のカシメ衆に舐められない様に教えられ、いわば任侠道の様な関係性を持っていたそうです。

おすすめの記事