【本音と建前】一人親方のジレンマ、カッコつけの流儀と白飯の比率

洋服屋稼業が長かったこともあり、自営業の苦しみというか、こういったジレンマはメチャクチャ感じるところであって、おそらくほとんどの「自分で稼いでいる人」は、大なり小なりこの部分で考えるところは多いと思う。

オドレ!極道を警察かなんかと勘違いしとりゃせんか!
 

ナニワ節だけじゃ極道はメシは喰えんので!
 
by 「第三の極道」服部烈

洋服屋の時代は、やっぱり尖っていたかったし、お客さんも、お店のコンセプトとして尖っているところ、カッコつけているところを期待していた様なお店。

でも、世の中の割合的に言えば、僕たちが狙いたい、支持されたいそうというのは圧倒的なマイノリティー(イノベーター)。

マーケティング用語でいうところの、イノベーター理論。

こちらのサイトより引用。

  1. イノベーター(2.5%): 新しい技術やアイデアを最初に取り入れる先駆者。
  2. アーリーアダプター(13.5%): イノベーターに続いて新しい技術を試し、影響力を持つ人々。
  3. アーリーマジョリティ(34%): 周りの人々が使い始めると、少し遅れて取り入れる大多数の人々。
  4. レイトマジョリティ(34%): 新しい技術やアイデアが普及した後、慎重に取り入れる人々。
  5. ラガード(16%): 最も遅れて新しい技術を取り入れる人々。

イノベーター理論的な考えで言えば、売り上げを支えているのは3番と4番。

経営者的に言えば、この3番と4番がいるからこそ、1番や2番を狙う為の商品も購入出来る財力があるわけで、この3番と4番は絶対に外してはならないところ。

とは言え、当時の僕たちの感覚といえば、1番の人たちに支持を得たいがために、3番と4番を拒絶したり、3番と4番はウチの店に必要ないでしょう!みたいな考えだった。

3番と4番の層は、アパレル業界では「マス」って言ってたけど、要するに、一般的な人が一番多いわけで、結局その人たちが買えるものがなければそもそもお店として成り立たないわけで。

よく、先輩に言われていたことで、お弁当のオカズを例にして怒られていた。

「お前の展示会の服の選び方はオカズだけ。オカズはご飯、白飯があるからこそ美味しい。」

ということ。当時は、確かに経営とか、売り上げとか関係なく、どれだけお客さんから認められるか、他の洋服屋に圧倒的な差をつけるか?みたいなところを大事にしていた。

だから、ウチのお店には、3番や4番は必要ないっしょ!みたいな感覚。

お弁当の割合で言えば、白飯なんてなく、白飯のスペースにおかずがギッシリみたいな(笑)

たまにご飯のスペースがあっても、チャーハンみたい(笑)そんな感じで、全くバランスを考えていなかった。

でも、ビジネスにおいては、絶対に白飯は必要。

「本音と建前」という部分があるけど、建前的には「自分の好きな事」「自分が選んだものだけ」みたいなところばかりで身の回りを固めたい。

でもそれって、稼ぐという部分で言えば、ジリ貧になっていることになる。

一番大きなシェアを占める3番と4番が「買えるものがない」わけだから当然といえば当然。

デザイナーも、オシャレな人たちから頼まれて、おしゃれな商品を出す、メイクアップアーティストであれば、ステージ用のメイクだけでやりたい、みたいな気持ちだと思う。

でも、売上をキープするためには、それだけをしたいという気持ちを抑えて、町内会等のプリントもしなきゃいけないかもしれないし、デザイン性とか全く関係ない様なPOPも書かないといけないかもしれない。やりたくもないメイクをしないといけないかもしれない。

美容師も、自分のスキルを発揮できるような斬新な髪型ばかりをしているわけではないのと同じ。

結局ビジネスは、絶対に白飯の部分を考えていかないといけない。

でも、白飯の部分というのは、概して生産性もなく、自分のスキルも上がっている感覚もなく、売りたくないものだったり、自分のお店のとは尖っている部分とはベクトルが真逆の可能性もある。

でも、卵が先か鶏か、パラドクス的な考えになってしまうけど、結局白飯がなければ、自分達がカッコつけるための商品やコダワリも絵に描いた餅になってしまう。

そこの白飯の部分と、オカズの部分の割合は、経験値というよりも、年齢的な要素の方が多いかもしれない。

でも、いまだに白飯が全然なくてジリ貧だ人たちもよく見るけど…

カッコつけや職人は概して、白飯思考がなくて、内側にベクトルが向いてしまうもの

僕もこの部類に入るんだけど、やっぱり白飯とオカズの部分は意識としてあげないとなかなか難しいもんだったりする。

伊集院さんがm1について語っていたけど、これこそ「極めすぎて本質を忘れている」と言う最も良い例なのかも。

こういうのって、色々な業種で当てはまると思うけど、自分の当たり前を世の中の当たり前と勘違いしていたりするからこそ起こること。

洋服屋とかでいえば、白飯とか全く考えてなくて「自分達がやっている事がわからないお前たちがダサいんだよ」みたいな感覚。

「尖っている自分達」に圧倒的な自信を持っている一種の自惚れから出る感情。

自分の商品、自分のサービス、自分の発言すること、そういうの全て。結局このような感覚になっていっちゃうのが1人親方だったり、職人だったり、かっこつけてる人間だったりする。

白飯があるおかげで商売が出来てる、みたいな根本的な所が欠けているから起こってしまう考え方。

いや、勿論だけど、白飯なんかなくても、

  1. イノベーター(2.5%): 新しい技術やアイデアを最初に取り入れる先駆者。
  2. アーリーアダプター(13.5%): イノベーターに続いて新しい技術を試し、影響力を持つ人々。
  3. アーリーマジョリティ(34%): 周りの人々が使い始めると、少し遅れて取り入れる大多数の人々。
  4. レイトマジョリティ(34%): 新しい技術やアイデアが普及した後、慎重に取り入れる人々。
  5. ラガード(16%): 最も遅れて新しい技術を取り入れる人々。

1番と2番だけで売り上げが成り立っていれば言うことはないし、それが理想的なのは間違いない。

このパーセンテージは、分母によって変わってくるので、例えば、イノベーターが2.5%だったとしても、市場の分母が100人の2.5%と、1万人の2.5%では話が変わってくる。

もちろん、後者の方は市場規模が凄いことになっているので、当然だけどに分母は大きいが、相対的なライバルやその他の障害は非常に大きくなっている。

例えば、ラーメン屋さんであれば、分母の大きさは立地条件などによっても変わってくるので、味の「イノベーター層」を狙った場合も、成功者と失敗でかなりの差があるはず。

ラーメンの奇抜な発想のクリーミーな泡とか、何とかの出汁とか、スタジアムのような店内とか、そういうのって時間軸で段々と人気がなくなっていって、結局潰れている所が多い気がする。

仮にコンセプトは当たった、味も当たった、となれば、ライバルが後続で次から次に出てくるから、結局時間軸で利幅は減っていったりすると思う。

結局、3番と4番をしっかりと意識している人が成功しているような気がする。

かといって、ステーキ屋さんで「冷やし中華はじめました」的な3番と4番の狙い方はダメだと思うし、とんこつラーメンでスタートしたお店が、時間軸によってかき氷やオデンが出てきたらそれはそれで違うと思う。

このあたりの本音と建前のさじ加減、微妙な塩梅(あんばい)というのが、もちろん1人親方のセンスになっていくんだけど…

ナニワ節ではご飯は食べれない

冒頭の文章のように、浪花節(建前)だけでは僕たちはご飯を食べることが出来ないのが現状。

もちろん、白飯なんかいらない、イノベーターだけを相手にする商売の方が、見た目もいいし、インスタ映えもするし(笑)、自分自身もストレスがないし、それは理想的であるし、僕もそこを目指したい。

でもやっぱり無理なものは無理。

正木礼二郎というヤクザの話なんだけど、とにかく仁義に重きを置き、曲がったことが大嫌い、という昔カタギのヤクザ。

しかし、若頭の服部烈からよく怒られることもしばしば。

ヤクザはヤクザ、警察ではない、お前の仁義の筋は、風紀委員のようなもの、みたいな感じ。

これって、本音と建前、ご飯とオカズの割合、と同じ考え方だと思う。

仁義を突き詰めていくと、カタギ衆には迷惑をかけない、みたいな話になってくる。そうなってくると、結局ヤクザを取り締まる警察の様な倫理感になっていく。

なかなか難しいところですね^^;

 

 

余談|第三の極道について

この漫画をかいている人は村上和彦さんという方です。メチャクチャ大好きな漫画家。

ゴルゴ13の作家「さいとう・たかを」に憧れて、ヤクザから漫画家になったという人。

ゴルゴ13大好きなので、最初は本当に「さいとう・たかを」作なの??と思ったくらい。

色々なシリーズがあるけど、この第三の極道の正木礼二郎は特に好きなキャラクター。

藤堂組」は、おそらく山口組をベースにしているモノで、関西で1番大きな組織という設定。その中の藤堂組 服部組 服部烈は、藤堂組の若頭。

服部烈と正木礼二郎は、もともと敵対する組織で、お互いの男気に惚れて組長と子分の関係になっている。

正木礼次郎が警察官に扮し、服部烈をさらって殺すシーンは、この中のストーリーで何度も何度も語られるところ。

正木礼次郎に最初からついていっている屋代とともに、藤堂組でも頭角を現していくストーリー。

とある事件がキッカケで、東京の関東連合会の黒澤組の若頭と兄弟盃をすることになるんだけど、その時もやられた服部烈が自ら、当時の出来事を回想しているシーンがある。

 

 

 

 

 

 

 

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